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経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)
本年6月16日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」と新しい資本主義実現に向けた実行計画の改訂版など、政府3計画が閣議決定されました。このうち「リ・スキリング」「職務給の導入」「労働移動の円滑化」の三位一体の労働市場改革の箇所につき抜粋してみました。
今後の事業計画のご参考になれば幸いです。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2023/2023_basicpolicies_ja.pdf
新しい資本主義の加速
この骨太の方針が閣議決定される前の本年4月25日には、自民党 新しい資本主義実行本部 リ・スキリング、労働移動、構造的な小委員会から提言が出されています。
https://storage.jimin.jp/pdf/news/information/205746_1.pdf
この提言内容が多少なりとも骨太の方針に影響を及ぼしています。「終身雇用」、「年功賃金」、「企業別労働組合」の3つが特徴であった日本的雇用慣行をぶち壊し、構造的に賃金が上がっていく仕組みを作ることを目的としています。
三位一体の労働市場改革による構造的賃上げの実現と「人への投資」の強化、分厚い 中間層の形成
骨太の方針では、「成長と分配の好循環」と「賃金と物価の好循環」の実現の鍵を握るのが賃上げであり、これまで積み上げてきた経済成長の土台の上に、構造的な人手不足への対応を図りながら、人への投資を強化し、労働市場改革を進めることにより、物価高に打ち勝つ持続的で構造的な賃上げを実現することを目指しています。
■リ・スキリングとは
ここでは、職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自らの意思でリ・スキリングを行い、職務を選択できる制度に移行していくことが重要であると言っています。この「リ・スキリング」とは、「成長分野に移動するための学び直し」を意味します。岸田首相は2022年10月3日の臨時国会の所信表明演説で「リ・スキリング支援策を整備する。」「特に個人のリ・スキリングに対する公的支援については、人への投資策を『5年間で1億円』に拡充する。」とこの言葉を使いました。
政府は、ますます進む少子高齢化社会において労働移動を積極的に進め、労働者が転職した後に賃金が上がる仕組みを構築したいのでしょうか。人的資本として人に投資をし、長期にわたり活躍して欲しいと願う企業にとっては、何とも矛盾するところです。
■三位一体の労働市場改革
内部労働市場が活性化されてこそ労働市場全体も活性化するのであり、人的資本こそ企業価値向上の鍵である。こうした考え方の下、「リ・スキリングによる能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」、「成長分野への労働移動の円滑化」という「三位一体の労働市場改革」を行い、客観性、透明性、公平性が確保される雇用システムへの転換を図ることにより、構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく。と言っていますが、こちらは前述の自民党リ・スキリング、労働移動、構造的な小委員会の提言内容そのものでした。また、地方、中小・小規模企業については、三位一体の労働市場改革と並行して、生産性向上を図るとともに、価格転嫁対策を徹底し、賃上げの原資の確保につなげるとも言っています。
■リ・スキリングによる能力向上支援
現在、企業経由が中心となっている在職者への学び直し支援策について、5年以内を目途に効果を検証しつつ、個人への直接支援を拡充し、教育訓練給付の拡充、教育訓練中の生活を支えるための給付や融資制度の創設について検討するとのことです。また、雇用調整助成金も休業に対するものよりも、教育訓練に対するものを選択しやすくするように助成率を見直していくとのことです。
これからは労働者本人が希望して行う学び直しに対して積極的に予算を投入し、労働者の転職させ賃金アップを図っていくことが狙いであると見てとれます。
■個々の企業の実態に応じた職務給の導入
職務給(ジョブ型人事)の日本企業の人材確保の上での目的、人材の配置・育成・評価方法、リ・スキリングの方法、賃金制度、労働条件変更と現行法制・判例との関係などについて事例を整理し、個々の企業が制度の導入を行うために参考となるよう、中小・小規模企業の導入事例も含めて、年内に事例集を取りまとめるとのことです。
政府は年功賃金から脱却させ、労働者が行う仕事に対して賃金を支払う職務給への移行を進め、労働者自らがスキルアップを図り、より高賃金の職種に就かせることを目標としているようです。それでは、低賃金である軽易な職務に就く者がいなくなってしまいます。これに外国人労働者を当てようと考えているとしたら、とても安易ではないかと思います。
■成長分野への労働移動の円滑化
失業給付制度において、自己都合による離職の場合に失業給付を受給できない期間に関し、失業給付の申請前にリ・スキリングに取り組んでいた場合などについて会社都合の離職の場合と同じ扱いにするなど、自己都合の場合の要件を緩和する方向で具体的設計を行う。また、自己都合退職の場合の退職金の減額といった労働慣行の見直しに向けた「モデル就業規則」の改正や退職所得課税制度の見直しを行うと書かれています。これを見ても、積極的な転職を推進しているように見えます。
政府が掲げる「三位一体の労働市場改革」に関しては、今後の企業、ひいては日本国のために上手く進んで欲しいと思います。しかし今後は、労働者は自分が高く評価されるためにリ・スキリングを行い、企業は優秀な人材を確保確保するためにお金を積む(高賃金を支払う)、そんな時代になってしまうのでしょうか。今後の政策に注目です。
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