COLUMN コラム
パートタイム・有期雇用労働者のルール改正
パートタイム・有期雇用労働者(以下「パート労働者」といいます。)の待遇改善を進めるためのルールが改正され、令和8年10月1日に施行されます。雇い入れ時における労働条件明示事項の追加や、同一労働同一賃金ガイドラインの見直しが含まれています。今回は、改正の概要と対応方法について、紹介します。
■■■雇い入れ時における労働条件明示事項の追加
労働条件の明示については、労働基準法第15条に定めがありますが、パート労働者に対しては、パートタイム・有期雇用労働法において以下の項目も明示が求められています。
・昇給の有無
・退職手当の有無
・賞与の有無
・雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
今回の改正により、これらの項目に加え、新たに以下の項目が追加されました。
・待遇の相違の内容・理由などに関する説明を求めることができる旨
□□待遇の相違等に関する説明要求権の明示義務
今回の改正で新たに「通常の労働者との間の待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨を労働条件として明示しなければならなくなります。この明示を怠るなどルールに違反した事業主に対しては、10万円以下の過料に処されるという罰則も設けられているため、確実な対応が必要です。実務においては、社内の労働条件通知書フォーマットを改定しておく必要があります。
【記載例】
次の窓口に対して正社員(通常の労働者)との間の待遇の相違(内容・理由)等について説明を求めることができる。
部署名:○○部 担当者職氏名:○○ ○○ 連絡先:○○-○○○○-○○○○
■■■同一労働同一賃金ガイドラインの改正と対応
同一企業内における正社員とパート労働者との間で、不合理な待遇差を設けることはパートタイム・有期雇用労働法で禁止されています。今回の改正では、どのような待遇差が不合理に該当するのかを示した「同一労働同一賃金ガイドライン」の内容が新たに更新され、各種手当や福利厚生の取扱いが明記されました。
□□賞与・退職手当および各種手当の見直し
新たなガイドラインにおいて、特に注目すべきは賞与と退職手当の扱いです。これらの手当には、通常、労務の対価の後払い、功労報償など様々な目的が含まれます。パート労働者と正社員との間で職務内容などに違いがあったとしても、その違いに応じた均衡のとれた内容を支給しない場合は不合理と判断される可能性が生じます。そのため、自社の賞与や退職手当の支給目的がパート労働者にも当てはまるかどうかを点検する必要があります。
また、無事故手当については正社員と業務内容が同一であれば同一の支給が義務付けられます。家族手当や病気休職における給与保障についても、契約更新を繰り返すなど相応に継続的な勤務が見込まれるパート労働者に対しては、正社員と同一の支給や保障を行う必要があります。また、住宅手当が「転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるもの」の場合、正社員と同一の転居要件があるパート労働者に対しては同一の支給が求められます。
□□福利厚生、休暇および褒賞の適用
各種手当だけでなく、福利厚生や休暇制度においても格差の解消が明記されました。福利厚生施設の利用料金や割引率といった利用条件について不合理な待遇差を設けることは禁止されます。
また、夏季冬季休暇については正社員と同一の休暇を付与しなければならず、一定期間勤続した労働者に付与する褒賞についても、正社員と同一期間勤続したパート労働者に対しては同一の褒賞を付与しなければなりません。
□□待遇差を解消する際の実務上の留意事項
不合理な待遇差を解消しようとする際、正社員の労働条件を引き下げることで差をなくすような不利益変更での対応ではなく、パート労働者の条件改善を図ることが求められます。また、「定年後に継続雇用された有期雇用労働者だから」という理由だけで待遇差が直ちに合理的となるわけではなく、個々の待遇の性質や目的に照らして判断されます。同様に、正社員の人材確保や定着を図るという目的のみを理由に待遇差を正当化することも当然には認められません。
なお、適用対象外である無期雇用フルタイム労働者や多様な正社員についても、労働契約締結時にはガイドラインの趣旨を考慮し、不合理な待遇差の有無をあらかじめ点検して確実に解消していく姿勢が重要です。
■■■雇用管理の改善に関する措置の変更
今回の改正にあわせて、事業主が講ずべき雇用管理の改善等に関する指針の内容も改められました。職業能力開発の適用、公正な評価、労使の話し合いの促進など、多角的な視点から職場環境を整備することが求められています。
□□職業能力開発の遵守と公正な評価の実施
事業主は、職業能力開発法がパート労働者にも適用されることを認識し、必要な職業訓練の実施や教育訓練を受ける機会の援助に努めなければなりません。また、賃金決定にあたっては、職務の内容や成果、意欲、能力、経験などの就業実態を公正に評価し、昇給等に反映させることが望ましいとされています。具体的には、正社員と共通する職務に対しては、共通した評価項目や賃金制度を設けることなどが推奨されます。さらに、福利厚生施設の利用に関しても、物品販売所や保育所、診療所、駐車場などの利用について便宜を供与するよう配慮する必要があります。
□□就業規則改定における過半数代表者の選出要件
パート労働者に関する就業規則の作成や変更を行う際は、各事業所のパート労働者の過半数を代表する者(以下「過半数代表者」といいます。)から意見を聴くよう努める必要があります。この過半数代表者の選出要件として、労働基準法上の管理監督者でないこと、また選出目的を明らかにした投票や挙手などの適正な手続きにより選ばれた者であって、事業主の意向に基づき選出された者でないことに留意が必要です。
また、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由とする解雇等の不利益取扱いの禁止や、事務を円滑に遂行するための事務スペースや事務機器の提供といった必要な配慮を行うことも留意すべき事項となっています。
□□正社員転換措置と説明方法の工夫
正社員への転換を推進するため、制度の構築だけでなく複数の措置を講ずることが望ましいとされています。契約更新時の面談や電子メールを活用して対象労働者の意向を確認し、配慮をしなければなりません。
また、労働者から待遇差に関する説明を求められた際は、資料を活用した口頭説明や、分かりやすい内容の資料交付によって、理由や考慮した事項を説明しなければなりません。口頭説明の際には使用した資料を交付することが望ましく、個人情報等の観点から交付が難しい場合でも、事後に求めがあったときに閲覧させるなどの工夫が必要です。
なお、労働者からの説明要求がない場合であっても、契約更新時などに待遇差の内容や理由に関する資料を交付したり、説明を求めることができる旨を周知したりする対応を行うことが望ましいです。労働者との話し合いの機会の設置やアンケートの実施、さらに正社員転換の実績等をホームページなどで定期的に公表する体制を整えていくことも重要です。
□□おわりに
今回のルール改正は、パート労働者の処遇を正社員とのバランスを意識した適切なものへと見直し、企業の雇用管理体制全体をアップデートさせる契機となります。施行日に向けて、まずは自社の各種手当の支給目的や就業規則、労働条件通知書の記載内容について点検を開始することをお勧めいたします。不合理な待遇差の解消や適切な説明体制の構築に向けて、早期に必要な準備を進めましょう。
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