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東京の労働行政Profile2022(その①)

私は立場上、東京労働局の労働基準部、雇用環境・均等部、職業安定部の幹部と、東京都社会保険労務士会とで定期的に開催する意見交換会に参加します。その席上、東京労働局さんに毎年度ご説明いただくのが、東京労働局行政運営指針を冊子にまとめた「東京の労働行政Profile」(以下URL参照)です。

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001148751.pdf

 

■■■令和4年度の重点施策

行政運営指針の中の重点施策は、①雇用環境・均等担当部署における施策、②労働基準担当部署における施策、③職業安定部署における施策、④需給調整事業担当部署における施策、⑤労働保険適用徴収担当部署における施策に分かれて発表されます。今回は、過日意見交換を行った、担当部署のうち雇用環境・均等部の重点施策を読み解いてみたいと思います。

なお、紙面の関係から労働基準部については、次回ご紹介します。

 

□□雇用環境・均等担当部署における施策

雇用環境・均等部は男女ともに働きやすい環境を実現するため、「働き方改革」や「女性の活躍推進」、「仕事と家庭の両立」などの施策を推進する他、個別労働紛争の適正かつ迅速な解決を促進しています。

 

■誰もが働きやすい労働環境の整備

近年の「働き方改革」の取組の促進から引き続き、「働き方改革」実現に向けた取組を一番に挙げています。特に中小企業・小規模事業者にも確実に実現してもらうために商工団体等と連携を図り、企業訪問による啓発、好事例の紹介、説明会の実施を進めていくとのことです。また、長時間労働の削減、同一労働同一賃金の実現の他、生産性向上による賃上げ、人手不足解消に向けた課題解決について、東京働き方改革支援センターを通じた支援を継続し、加えて、コロナ禍において普及が進んだテレワークに関して、良質なテレワークの普及促進を図るためにテレワークガイドラインの周知を進めるとのことです。

これらを見ても、中小企業・小規模事業者における「働き方改革」の普及が、コロナの影響もあって進み具合が鈍いとの印象を持っているようですね。時間外労働の上限規制、年次有給休暇5日の時季指定、過重労働防止、非正規労働者・派遣労働者と正規労働者との格差是正、60時間超時間外労働の割増賃金引上げ等、働き方関連法案への対応を進めていく必要があることが分かります。

 

■女性の活躍推進等

本年4月1日から、改正女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」の策定・届出・情報公表等の義務が、常時雇用労働者数301人以上から101人以上の事業主に拡大されました。担当部署でも女性活躍推進に係る取組が確実に行われるよう指導を進めていくようですので、新たに対象となった事業主で「一般事業主行動計画」の策定・届出が済んでいない場合は、急ぎ、対応する必要があります。

女性活躍推進への取組が優良であり一定の要件を満たした企業に与えられる認定マーク「えるぼし」・「プラチナえるぼし」の取得を目指す企業の支援も行われます。

 

■仕事と家庭の両立支援対策の推進

なんと言っても、本年4月1日と10月1日から改正法が施行される育児・介護休業法の周知を進めていくようです。妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置、育児休業を取得しやすい雇用環境整備の義務付け及び産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)の創設(こちらは10月1日以降ですが…)等の対応がお済みでない企業は、就業規則の改定や、説明書類や意向確認様式等の整備に直ちに取りかかることをお勧めします。育児休業の取得等を理由とする不利益取扱いに関する労使間の紛争については、紛争解決援助等の制度の活用を促し、早期解決を支援すると言っています。法令違に反対する報告徴収・是正指導や調停(あっせんのようなもの)により紛争解決に力を注ぐとのことですので、個別労働紛争に発展しないよう、制度を整えた上で労働者に周知・運用する必要があります。また、介護離職を減らすため介護休業制度の周知を行うとのことです。

加えて前述の「えるぼし」同様に、「くるみん」・「プラチナくるみん」の取得に支援をし、次世代育成支援対策を推進していただくために「一般事業主行動計画」の届出等の徹底を図るとのことです。

仕事と家庭の両立の中には「不妊治療と仕事の両立支援」もあり、社会の関心も高く、不妊治療を受けやすい職場環境の整備の一環として不妊治療を受けやすい休暇制度導入等を事業主に働きかけ、職場環境整備に取り組む中小企業事業主に対しては助成金を支給することにより支援するとのことです。

新型コロナウィルス感染症の影響による子供の世話等により仕事を休まなければならない労働者に特別の有給休暇を与えた事業主に対する助成も、引き続き推進していくようですので、このような立場の労働者保護に目を配る必要もあります。

 

■雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

正社員とパートタイマー・有期契約労働者間の公正な待遇の確保に向けて、パートタイム・有期雇用労働法に基づく報告徴収等を実施することにより、法の着実な履行確保を図り、併せて、同一労働同一賃金等に取り組む先行企業の事例の収集・周知等により、非正規雇用労働者の待遇改善に係る事業主の取組気運の醸成を図ると言っています。

同一労働同一賃金については、これから増々判例が増え、具体的案件ごとの対応事例が示されてくるとは思いますが、まずは、労働者から説明を求められたときに対応できるように、格差にかかる合理的な理由を書面により整備しておく必要があります。

また、無期転換ルールについて、モデル就業規則等を活用し、引き続き事業主に向けた周知を行い、意図的に無期転換を避けるための雇止め等には啓発指導を行うと言っています。企業としては、無期転換制度の整備と正社員登用の仕組みの整備を行っていく必要があると考えます。

 

■総合的ハラスメント対策の推進

ハラスメントについては、本年4月1日より中小企業も対象となるパワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)への対応に加え、セクシュアルハラスメント及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント防止措置にかかる整備を行うとのことです。

加えて、就職活動中の学生等に関するハラスメントについては、事業主に対して、ハラスメント防止指針に基づく「望ましい取組」の周知徹底が図られ、自主的な取組を促し、学生からの相談等により問題を把握した場合には、事業主に対して適切な対応を求めると言っています。雇用する社員のみならず、入社を検討する求職者への配慮も必要です。

さらには、カスタマーハラスメント等についての「望ましい取組を事業主に促す。」とも言っていますので、ハラスメントの範囲が一段と広がります。

 

総合労働相談の実施と個別労働関係紛争の解決促進

総合労働相談コーナーは、都内20か所にあります。そこでは、法令・裁判例等の 情報提供、当事者間の自主的解決に向けたアドバイス、他の処理機関に関する情報提供等のワンストップサービスを実施するとしています。加えて、相談の過程で個別労働紛争を把握した場合には、相談者の意向及び紛争の実情等を踏まえて、「労働局長による助言・指導」や「紛争調整委員会によるあっせん」を実施して適正かつ迅速な紛争の解決を図ると言っていますので、事業主としては個別労働紛争に発展しないよう、法令順守を徹底し、労働者が気持ちよく働ける環境を整備し、労使相互の理解し合うことが重要だと考えます。

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