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東京の労働行政Profile2022(その②)

大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から時間外労働の上限規制が適用されているのは既にご承知の通りです。さらに2024年4月からは、建設事業、自動車運転の業務、医師に関しても、各々若干の違いはあるものの時間外労働の上限規制が適用されます。労働基準行政もこれらには特に注目しています。前回に引き続き、東京労働局労働基準部の重点施策を見ていきましょう。

 

■■■はじめに

コロナ禍において、企業の働き方改革の進み具合は鈍っていると思います。東京労働局においても「誰もが安心して働き活躍するTOKYOへ」と題して、企業の働き方改革をさらに進めるべく施策を練っています。貴社の働き方改革のヒントになれば幸いです。

 

□□労働基準担当部署における施策

労働基準行政は、労働者の労働条件と安全と健康を守ることを基本的な使命とし、公正、適正で納得して働くことのできる環境整備に努めています。また、管内18か所の労働基準監督署では、労働基準法、労働安全衛生法をはじめとする法令の施行や労災補償の事務を所掌しています。Profileでは、「労働時間」、「労働条件」、「災害防止」や「最低賃金」など施策について記載されています。

 

労働時間の縮減等に取り組む事業者への支援

時間外労働の上限規制への対応を含む労働時間の縮減等に取り組む中小企業・小規模事業者に対し、相談対応のほか、説明会の開催や個別訪問による支援など、事業者等に寄り添った丁寧な支援を実施するとしています。前述の通り2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用される事業・業種については積極的に支援を行うようです。

特に医師の支援については、各都道府県に医療勤務環境改善支援センター(以下、URL参照)が設置され、社労士などが具体的相談・アドバイスを行っています。

https://iryou-kinmukankyou.mhlw.go.jp/outline/work-improvement-support-center

 

長時間労働の抑制に向けた監督指導等

長時間労働の抑制及び過重労働による健康障害を防止するため、時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると考えられる事業場や、長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対しては、監督指導(臨検監督)が行われます。会社の社員からの訴えがあった場合には、当該社員に係る事案が終了した後に、全社員に関する調査が実施される可能性があります。

 

法定労働条件の履行確保等

労働条件の明示、時間外・休日労働協定の締結・届出など、企業において基本的な労働条件についての法規制に対応し、それを定着させることができるよう、労働基準関係法令の遵守を徹底するとのことです。また、サービス残業や残業代の未払いを防止するため、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(以下、URL参照)を周知徹底し 労働時間管理の指導を行うとのことです。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf

また、企業倒産に伴い賃金未払いのまま退職した労働者の救済を図るため、「未払賃金立替払制度」の運用にも力を入れるとのことです。

 

特定分野における労働条件確保対策

技能実習生を含めた外国人労働者、自動車運転者、障害者といった分野の労働環境を適正なものとするため、関係機関との連携のもと労働基準関係法令の遵守、徹底を図るとのことです。

新型コロナウィルス感染症による入国制限が緩和されつつある中、将来の労働力不足に対応するために外国人の登用がより進むと考えられます。「外国人労働者相談コーナー」においては、英語・中国語をはじめ 11 言語での労働相談に対応するほか、「外国人在留支援センター(FRESC)」内に設置した「外国人特別相談・支援室」において、外国人労働者を雇用する事業主に対し、労務管理や労働安全衛生管理に関する相談対応や、個別訪問等による支援を行っています。

 

第13次労働災害防止計画(13次防)重点業種等の労働災害防止対策の推進

13次防最終年度であった令和3年度、東京労働局管内における労働災害による死亡者数は77人、死傷者数は12,876人にも上りました。労災事故の増加が顕著である第3次産業については、特に、転倒災害の減少に向けた集中的取組として、転倒災害防止対策推進要綱に基づく3つの目標「段差解消」、「乱雑解消」、「濡れ解消」に向けた取組の促進を図るとのことです。

陸上貨物運送事業については、「荷役作業の安全対策ガイドライン」(以下、URL①参照)に基づく取組の促進を図り、製造業については、機械災害の防止のため、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(同②)及び「機械の包括的な安全基準に関する指針」(同③)に基づき、製造時及び使用時のリスクアセスメント、残留リスクの情報提供の確実な実施行うようです。

 

■死亡災害の撲滅、高齢者の安全衛生対策、メンタルヘルス対策、熱中症予防

死亡災害の約4割を占める建設業に対して、墜落・転落防止対策の促進を図り労働基準監督署による現場指導が図られます。

高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境の実現に向けた「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」(以下、URL参照)や中小企業へ補助金の周知を行うそうです。

https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000609494.pdf

健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないようにするため、ストレスチェック制度をはじめとするメンタルヘルス対策も含めて、産業保健活動が各事業場で適切に実施されるように指導が行われます。

今年は梅雨明けが特に早く、6月に酷暑を経験しています。熱中症予防対策の計画的な実施について周知が図られます。建設業・警備業・陸上貨物運送事業に特に注目しています。

 

最低賃金制度の適切な運営

東京都の最低賃金は、昨年10月1日より1,041円となっています。今年も昨年同様の賃上げがあるのではないかと見ているようです。政府が掲げる「労働生産性を高め、労働者の賃上げを進める」ために、各省庁横断的な対応が求められているため、都道府県労働局においても臨検監督時において、企業に賃上げを依頼する可能性があるとのことです。もちろん、あくまでもお願いベースではありますが…。

新型コロナウィルス感染症が一日でも早く終息し、日本経済が早期に回復することを祈るばかりです。

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