COLUMN コラム
【第3回】施行前に整えるべき社内整備──就業規則・情報管理規程・研修体制のポイント
こんにちは、社会保険労務士法人味園事務所の味園裕也です!
全3回の連載、最終回です。「こども性暴力防止法(日本版DBS)(以下「法」といいます。)」の施行日(令和8年12月25日)まで、残り時間は多くありません。今回は「では具体的に何から手をつければいいのか」という実務整備のポイントを解説し、当事務所の対応支援サービスもあわせてご紹介します。
整備すべき事項の全体像
法への対応として事業者が整備すべき事項は、大きく「①就業規則・服務規律等の整備」「②情報管理規程の整備」「③研修体制の整備」「④確認スケジュールの管理」の4つに整理できます。順番に見ていきましょう。
①就業規則・服務規律等の整備
こども性暴力防止法施行ガイドライン(こども家庭庁令和8年1月)では、事業者に対して「服務規律等(会社が守ってほしいルール)の整備・周知」を安全確保措置の一環として求めています。具体的には、児童等に対する性暴力等を禁止する旨、違反した場合に懲戒処分(職場の秩序維持のためのもの)の対象となる旨を就業規則に明記することが求められます。
就業規則の懲戒事由に「児童対象性暴力等に該当する行為」「不適切な行為(性暴力等には至らないがその前段階となり得る行為)」を明示的に加えておくことは、いざ懲戒処分を行う場合の有効性を担保する上でも不可欠です。また、こどもとの接し方や二人きりにならないためのルールを具体的に服務規律として規定しておくことも有効です。
なお、採用選考の際に誓約書等により性犯罪前科の有無を本人に確認しておくことも重要です。犯罪事実確認書による確認と並行して、採用時書類の整備も早めに着手することをお勧めします。
また、民間認定事業者については児童対象性暴力が発生した際の対応ルールや防止策を定めた「児童対象性暴力等対処規程(法第20条第1項第4号)」の作成が認定の要件となっています。認定申請を検討している事業者にとって、この規程の整備が最優先事項です。
②情報管理規程の整備
犯罪事実確認書及び確認記録等は、非常に機微性の高い個人情報です。法(法第11条・第14条)は、この情報の適正管理のために「情報管理規程」の整備を義務付けています。情報管理規程には、確認記録を取り扱う者の範囲・閲覧制限・保管方法・廃棄方法・漏えい時の対応手順等を定める必要があります。
確認書に記載された情報を「犯罪事実確認や防止措置」以外の目的に利用・提供することは原則として禁止されており、違反した場合は罰則(情報漏示等罪など。法第45条等)の対象となります。漏えい等の重大事態が発生した場合はこども家庭庁への報告義務(法第13条)も生じますので、緊急時の連絡体制も規程内に明記しておくことをお勧めします。
③研修体制の整備
法(法第8条・第20条第1項第5号)は、対象業務従事者に対する研修の実施を安全確保措置の一つとして位置付けています。性暴力等の防止に関する知識・意識の向上を目的とした研修を実施することが求められます。研修内容としては、法律の概要、禁止される行為の具体例、疑いが生じた場合の内部報告手順などが考えられます。研修は原則として「対象業務に従事する前」に完了させることが必須です。なお、施行時現職者(令和8年12月25日時点で対象業務に従事又は同年12月24日以前に内定している者)は、原則として、令和8年12月25日前に研修を受講する 必要があります。また、研修は一度限りの受講では効果が見込めないことがあるため、定期的に実施し、受講者の意識の醸成・定着を図ることが実務面では大切です。
④確認スケジュールの管理
在籍職員が多い事業者にとって、施行時現職者の確認を令和11年12月24日までに計画的に完了させるためのスケジュール管理が重要です。採用管理システムや人事台帳に「確認日」「次回確認期限(確認日の翌日から5年を経過する年度の末日)」を記録する項目を設け、更新漏れを防ぐ仕組みを整えておくことをお勧めします。
違反した場合の罰則
確認義務に違反した場合、義務対象事業者はこども家庭庁による事業者名等の公表(法第17条)や是正命令(法第18条・第30条)の対象となります。また、犯罪事実確認書を不正な手段で取得した場合は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(法第44条)に処せられる可能性があり、法人にも両罰規定(法第48条)が適用されます。「確認をしなかった」「管理が不十分だった」という事態は、法的リスクだけでなく、保護者や社会からの信頼喪失という取り返しのつかない結果を招きかねません。
連載を終えるにあたって
全3回にわたり、法の概要から犯罪事実確認の実務、社内整備のポイントまでをお伝えしてきました。この法律への対応は、こどもを守るという重要な目的と同時に、適切に整備することで「安心して預けられる事業所」としての信頼を保護者に示す機会でもあります。施行までの時間を有効に活用し、早めに社内整備や研修実施を進めていただくことが、事業者とこどもの双方にとって最善策と考えます。
社内整備に向けてお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
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【出典・参考】
こども性暴力防止法施行ガイドライン 令和8年1月 こども家庭庁
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/80127231-8582-476e-a6e7-9347e725ed96/3414a8af/20260210_policies_child-safety_efforts_koseibouhou_42.pdf
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